島原セクションハイク Day1

Kyusyu Maimai Trails

九州自然歩道の起点、福岡県の皿倉山山頂にある元標。長距離自然歩道提唱者ベントン・マッケイの言葉が刻まれている。(写真=一般社団法人 九州自然歩道フォーラム)

九州自然歩道は、九州を一周する総延長2932㎞の道。どこから歩きはじめても、一周回って戻ってこれるロングトレイル。自分が持てるだけの荷物を背負い、ゆっくりと歩いてほしい。カタツムリのシンボルにはそんな想いが込められている。

悩みや心配事は置いて行こう。草木を愛でながらこつこつ歩くと、今まで見えなかったものに気付くかもしれない。歩く旅は、少しずつ確実に前に積み上げていく、ポジティブでクリエイティブな行為だ。さあ、最初の一歩を踏み出そう。

Day 1

橘湾を目指して

今回スタートに選んだのは、長崎県島原鉄道の森山駅。時刻は午前8時30分。無人駅だったからか、すれ違う人は誰もいない。そして、目的の九州自然歩道の道標が見つからない。出だし早々、不安になってしまうが、道はなければつくればいい。と気を持ち直し、おもむろにハイカーズマップをみて確認すると、本線に繋がるルートはここからはっきりと伸びていた。畑や住宅街を横切り、小さな峠を越える。先人の労力に全体重をのせ、橘湾を目指していざ出発!

島原鉄道の森山駅に車を停めて、4日後にバスと電車を乗り継いで、またこの駅に戻って来る計画。

駅から橘湾に抜ける道を5kmほど南に歩く。清々しい朝の空気とのどかな風景はベストマッチ。

今回の旅の友、さっちゃんのバックパックは、世界一周したものからリニューアル。巾着は近所のおばあちゃんが作ってくれた食料入れ。その下には旅のお守りのムーミンがいる。バックパックには個性が宿る。

歩く旅は、いろんな個性と出会う旅でもある。自販機の横にはやんちゃなトトロとのんびりとした猫。

椿の花びらが散っていると呟いたら、「山茶花だよ」とさっちゃん。椿にもいろんな種類があるのか。さっちゃんは歩きながらいろんなことを教えてくれる。

やっとみつけた道標。4日間よろしくね、と頭を下げる。その後ろには?

Take Freeの柚子の袋詰め。12月と言えば柚子だよね。私は柚子をお風呂に入れると、ちょっと痒くなる。そんな話をしながら頂きます。

試しに食べてみると、すーっぱーーーー!強烈な酸味。これはお酒や炭酸と割るやつだ。今夜のためにとっておこう。こんなおもてなしに出会うのも歩く旅だからこそ。

しばらく行くと、諫早市森山唐比ふれあい牧場に到着。一頭がこちらを見ている。

あ、来た。

のしのし。

のしっ!

無表情に若干ひるんだが、牛さんの方が興味津々。黒い毛並みがうつくしい。下の草を引っこ抜いて渡すとむしゃむしゃと食べた。彼らのいる場所はすでに食べ尽くされている。

ひつじもこちらを伺っている。いや、私たちと同じようにお腹が空いているのかもしれない。

ネイチャーセンターも併設。風が強いのでしばらく休憩しよう。

先ほどの牧場も含め「唐比ふるさといきものふれあいの里」という公園になっている。

公園内には約2ヘクタールのハス池があった。花の見頃は7月上旬。

公園を後にして、標識をたどって歩く。街中の標識は見つけにくいので、宝探し感覚で行こう。

やっと海が見えた。次に歩くときは、この唐比海岸公園からスタートしたいと思った。諫早からバスが出ている。

ジャガイモの道

森山駅から橘湾に出るまでは、約8km。2時間ほどかかった。ここからは海を眺めながら歩く。大通りと九州自然歩道は並列していて、歩道側はほとんど車が通らないので安心。カルデラ噴火で生まれた美しい曲線の縁を歩く。
美しいのは湾だけではない、それはジャガイモ。畑からゴロゴロと溢れ出ている。道の脇にも転がっているので、ここはジャガイモの道と言えるかも。

しばらく行くと、石でつくられた駅の案内板を発見。周辺には駅は見当たらないが、「旧温泉軽便鉄道」という文字が。

なになに?この橘湾沿いの道は、大正から昭和初期にかけ鉄道が敷かれ、海沿いを蒸気機関車で小浜温泉まで行ったとある。なんて響きのいい旅なのだろう。廃線となってしまった現在は海沿いのドライブコースとして親しまれている。

私たちは海沿いを足で歩く。波音は自然と鼻歌を引き出し、のんびり感は最高潮。遠くに見える山々は雲仙普賢岳。今日はあの麓まで行くのかぁ。

あいにくの曇り空だったが良いこともある、海にはAngels Ladder(天使の梯子)が。

しばらく歩くと、茶色い塊がちらほら。

近づいてみると、小さなジャガイモだった。出荷できる大きさや形ではないのかな?長崎県は、全国で二番目のジャガイモの生産高だそう。

ジャガイモの苗。ジャガイモは好きだけど、こんな葉だとは知らなかった。海とジャガイモに挟まれて進む。

千々石海岸に着いた。橘湾を眺める道はここまで。

海鳥ともここでお別れ。

白い石のようだがよく見るとカモメ?なんだかセンチメンタル。

きらきらした海が、私たちを見送ってくれているよう。

ここからいったん歩道がなくなり、すぐ横を車が通るのでヒヤヒヤ。それでも行きたい場所がある。

それは、中学の修学旅行で立ち寄った千々石観光センター。この旅で一番行きたかった場所である。子鶴カステラとあるが…。

欲しいのはカステラではない。こちらの「じゃがちゃん」。一瞬タイムスリップしたかと驚いたが、かれこれ14年も経つのに外装が当時のままだったのだ。

当時、セーラー服を着てみんなで立ち食いした、思い出の「じゃがちゃん」は、とてもシンプルかつ美味。思い出すだけで唾液が。

そう、そう、そう、この味!丸ごと蒸したジャガイモを、揚げたての衣が包む。外はカリっ、中はほっふほふ。これは何本でもいけちゃうでしょう。あの時の感動がふたたび。島原県産のジャガイモで作られた串揚げ。1本200円。思い出はプライスレス。

「じゃがちゃん」を頬張りながら、千々石展望台へ。ところどころに見える茶色のジャガイモ畑を見ながらのほっふほふ。嗚呼、I LOVE じゃがいも。

千々石観察センター
長崎県雲仙市千々石町丙160
tel 0957-37-2254

長崎の「万里の長城」

九州自然歩道のおすすめの歩き方は、急がないこと。お店や観光地などの寄り道を楽しむだけではない。立ち止まって、振り返ったり、空を見上げたり、耳をすましたり。早く行ったり、距離を稼ぐだけではもったいない。

とはいえ、そろそろ日暮れ。カステラ本舗から橘神社を通って本日のゴール、牧場の里あづまへ向かう。カステラ本舗では13時をすぎていただろうか。ここから少し焦りだす。なぜなら、ここから山道。それに、可愛いレディーにとって人気のない夜道はちょっと心配。

でもやっぱり気になる食いしん坊。オーガニック直売所「タネト」。「じゃがちゃん」もよかったのだが、地産地消で作られた野菜とジビエのランチも食べたかった…。

オーガニック直売所 タネト
自家採種の在来種野菜、その土地と人と種のことを考えるのがコンセプトの直売所。
長崎県雲仙市千々石町(ちぢわまち)丙2138-1   
tel 0957-37-2238

車では気付かないが、歩いていると気付く観光案内板。他にも行きたいところがありすぎて、4日間じゃ足りないね。

林道へ。空には興奮ぎみの群れたカラス。下にはみかん畑。

食べ頃のたわわになったみかん。買って食べたらおいしい、勝手食べたらはんざい。

ここからは本日のラストスパート。1.5kmの登り。取り付きの標識が分かりづらいので注意しよう。

林道を抜けたら本日のゴール「牧場の里あづま」に到着。牧場の牛たちは夕食中。

こちらは万里の長城!ではなく、展望台から続く遊歩道の建物。

展望台デッキも完備。本日のハイライト!ここはあえて、「あづまの長城」と言いたい。牧場の里あづまは遊具もあり広大な公園となっている。BBQやキャンプもできるようだ。

展望台から、橘湾が遠くにみえる。なんだか歩く前の景色と違って見える。日も暮れてきたので、テントでも張りますか。

Day2へ続く

島原セクションハイクの全行程


計画に役立つ関連サイト

九州自然歩道ポータル
全ルートの「ハイカーズマップ」を公開。データが重いので表示に時間がかかる場合あり。

環境省「長距離自然歩道を歩こう」
環境省の国立公園ポータルサイト内にある日本全国の長距離自然歩道を紹介するページ。

九州自然歩道フォーラム
九州の豊かな自然、歴史、文化、人をつなぐ、ナショナル・ロングトレイルの実現を目指して、設立した個人及び団体のネットワーク。

原田 優

福岡県出身。中学校の国語教師を5年で退職。ふらりと始めた九州自然歩道のセクションハイクをきっかけに、ロングトレイルの面白さに目覚める。現在はフリースクールやカフェで働く傍ら、ロングトレイルライターとしても活動中。

Comments (4)

  1. アバター
    よしだりえ

    Day2が楽しみです!

    • 原田優
      原田優

      ありがとうございます!2日目は冬の雲仙普賢岳がきらきらと輝いていました。きっと、好きな景観です^^

  2. アバター

    続き、楽しみにしています。
    柔らかな色味の写真と、ふんわりした可愛らしい文章表現に癒されます。

    • 原田優
      原田優

      とても嬉しいコメントをありがとうございます!ふわふわしている性格が旅にも出てしまったようです…。続きも楽しみに!

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