島原セクションハイク Day 4

Kyusyu Maimai Trails

九州自然歩道の起点、福岡県の皿倉山山頂にある元標。長距離自然歩道提唱者ベントン・マッケイの言葉が刻まれている。(写真=一般社団法人 九州自然歩道フォーラム)

九州自然歩道は、九州を一周する総延長2932㎞の道。どこから歩きはじめても、一周回って戻ってこれるロングトレイル。自分が持てるだけの荷物を背負い、ゆっくりと歩いてほしい。カタツムリのシンボルにはそんな想いが込められている。

Day 4

海へと続く赤土

昨夜はぐっすりと眠ることができた。疲れもあるだろうが、風のない穏やかな夜と、心地よい芝生のおかげかも。九州自然歩道島原セクションは残すところ18キロ。海を目指して下っていくだけだ。

相棒の自立式テント。彼は少し重いけど、私を守ってくれるナイスガイ。

エコ・パーク論所原
南島原市北有馬町丙4731-2
0957-65-7056

歩くのも、重い荷物も4日目には慣れてくる。見る風景も解像度があがってくる。

遠くにぽつんと普賢岳が見えた。あの山の向こうから歩いてきたんだ。そして、赤土の畑もこの道も、あの火山から始まった。山も街も海もみんな繋がっている。歩いてみると体で実感できる。

ここはジャガイモ畑。普賢岳が小さく見える。赤い土壌は火山が生み出したと言われている。噴火は悲劇を生んだかもしれないが、豊かさも生んだ。
買った時は90cmもあったカステラも残すところあと一口。長崎県らしい行動食。

島原半島を歩くと、さまざまな作物を見かける。驚いたのは、それがなんという食べ物なのかわからなかったこと。きっと食べたことがあるはずなのに…。畑だけでなく、温泉や火山も、知らないことばかり。

緑が揺れるたびに、さわさわと風の通り道がみえる。目に見えるものが全てではない。
赤土にはパパイヤだって育つ。

そんなことを思う暇も、ハプニングもなく、舗装路を歩いて本日の目的地に到着。登山者の中には、コンクリートの道を歩きたくないという人もいる。けれど、この舗装路のおかげで、私たちは難なく海まで辿り着くことができた。良い悪いを言いたいわけではない。地図だって、湯加減のいい温泉だって、藪漕ぎのない登山道だって、誰かのおかげなんだなと思った。このことを当たり前にしていた私はまだ、世界の何ひとつ知らない、それを知る旅になった。

坂道を下った先には有明海が見えてきた。あっというまに着いちゃったね。
着いたのは口之津港のフェリー乗り場。
九州自然歩道の案内板を見つけた。これが島原セクション最後の標識。

島原の旅はここで終わりだが、私たちがここを終点としただけで、九州自然歩道にゴールはない。ここから船に乗り、熊本天草へと道はつながっている。

舗装路を楽しむコツ。

九州自然歩道を歩き出した頃、逃げ場のない不安や後悔で眠れない夜を過ごしたことがある。カラスの声と騒めく木々。空は薄暗く、星ひとつ見えなかった。ひとりぼっちが、はじめてだった。誰も、私がここに居ることを知らない。未知なる不安だった。けれど今では、屋根が無くても寝れるようになった。

数日ぶりに山から街へと下ると、人と挨拶を交わすだけでも嬉しくて、自販機にすらも抱きつきたくなる。今まで、ひとりぼっちで歩いていると思っていたけど、手に持ったペンも、髪留めのゴムも、道や自動販売機にだって、たくさんの人の存在がある。

畑で汗を流している人。ふかふかのベットを作る宿屋の人。「あんた何しよると?」と軽トラから声をかけてくれる人。その人たちに、小さな勇気をもらった。

この舗装路も、きっと誰かが汗を流している。作ってくれた人も、利用する人も、目には見えないけれどたくさんいる。当たり前だといえばそうだけど、なんだか嬉しくて、灼熱コンクリートで焼かれていても、にやけてしまう。

どこを歩いているのかわからなくなり、ひとり路頭に迷ってしまうことがある。そんな時は、足元を見てほしい。きっとその存在が背中を押してくれる。

ぐるっと九州を一周している九州自然歩道は、スタートもゴールも自分で決める。そして、自由で、ありのままでいいんだと教えてくれる。時にセンチメンタル。厳しくも勇気をもらえる、街と山と人をつなぐ道。

夕日を見ながらそんなことを考える時間があってもいいじゃないか。

悩みや心配事は置いて行こう。草木を愛でながらこつこつ歩くと、今まで見えなかったものに気付くかもしれない。歩く旅は、少しずつ確実に前に積み上げていく、ポジティブでクリエイティブな行為だ。さあ、最初の一歩を踏み出そう。

島原セクションハイクの全行程


計画に役立つ関連サイト

九州自然歩道ポータル
全ルートの「ハイカーズマップ」を公開。データが重いので表示に時間がかかる場合あり。

環境省「長距離自然歩道を歩こう」
環境省の国立公園ポータルサイト内にある日本全国の長距離自然歩道を紹介するページ。

九州自然歩道フォーラム
九州の豊かな自然、歴史、文化、人をつなぐ、ナショナル・ロングトレイルの実現を目指して、設立した個人及び団体のネットワーク。

原田 優

福岡県出身。中学校の国語教師を5年で退職。ふらりと始めた九州自然歩道のセクションハイクをきっかけに、ロングトレイルの面白さに目覚める。現在はフリースクールやカフェで働く傍ら、ロングトレイルライターとしても活動中。

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