アメリカ合衆国に、コンチネンタル・デバイド・トレイル(CDT)という長距離自然歩道がある。アメリカ三大トレイルのひとつと言われ、カナダ国境のモンタナ州、アイダホ州、ワイオミング州、コロラド州、そして、メキシコ国境のニューメキシコ州を繋ぐ、約5000kmの自然歩道だ。同じくアメリカ三大トレイルである、パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)と比べると、ルートには道標などのガイドがほとんど無いとされ、歩いているハイカーはおろか、トレイルエンジェルやトレイルマジックといった、ハイカーを助けてくれる人々も少ないと聞いた。
ざっくり言うとまだまだ未開拓で、荒々しく、冒険溢れるトレイルだということ。突如、通れなくなる自然の変化に対応するように、代替えのルートも多様(PCTは基本的に一本道)その分、総距離も、通るルートもハイカーらしさが出る面白い道だ。
僕は4年前にPCTを歩いた。なぜ、さらに過酷なCDTを歩こうと決めたのか。そう聞かれることもあるが、面白そう以外の理由が見当たらない。PCTの時に味わえたあの感覚、日常から距離を置いて、自由になりたかったというところだろうか。なによりも、行った事が無いところに行ってみたかった、ただそれだけなのです。
ハラハラの出国
多少緩和されたとはいえ、コロナ禍で、ワクチン接種証明などそろえるべき書類が4年前と比べて多く、本当に出国できるのか?という緊張状態が続く。
日本国籍の場合、90日以内のアメリカ渡航であればビザ不要だが、スルーハイク(ワンシーズン通して歩く)は長丁場。事前のビザ取得など英語能力が不可欠になる。その点は、英語に堪能な友人達の協力により、なんとか無事に乗り越え、めでたく出国。グローバル社会とはいえ、コンビニに行くとは訳が違う。改めて友は宝なり。
そして、長時間のフライト。そこで何が1番辛いかって?それはタバコ。喫煙者には風当たりの強い昨今、ポートランドの空港でやっと見つけた場所。スモークエリアはオアシスなり。
旅の序盤で大活躍のカバン。この中にザックごと装備をぎっしり詰め込んできた。こらなら雑に扱われても、多少破けても気にならない。
ポートランド駅から、イーストグレーシャーパーク駅まで移動する。人生初めてのアムトラックは、席も広く快適だった。乗ってるみなさんも年配のツーリストが多く友好的で、すっかりリラックス。
イーストグレーシャーパーク駅で出会ったアメリカ人のEmilyとドイツ人のTimとでヒッチハイクをする。ハイカーは見た目でバレるのだ。30分ほどヒッチハイクすると、セントメリーのビジターセンターまで連れて行ってもらえる車に出会えた。
パーミットは早いもの勝ち。
アメリカの国立公園内で泊まるためにはバックカントリーパーミットという許可書が必要だ。その日の数も限られている。要は早い者勝ちなのだ。PCTのようなスルーハイカー用のパーミットもCDTには存在しない。だから、許可を待つハイカーが割といるのだ。
CDTでは、モンタナ州グレイシャー国立公園、ワイオミング州イエローストーン国立公園、コロラド州ロッキーマウンテン国立公園とインディアンピークス・ウィルダネスでパーミットが必要。それぞれのエリアで個別に申請する必要がある。
ここ、グレイシャー国立公園ではトレイルに入る前に、レンジャーステーションへ申請しに行かなければならない。申請に訪れたはいいものの、2022年の今年はグレーシャーパークを訪れる観光客が激増しているらしく、思い通りの行程のパーミット(許可証)が入手できなかった。受付で翻訳アプリを駆使し、なんとか妥協案を決める。持つべきものは翻訳アプリ。
そしてついに!CDT最初のセクション、グレイシャー国立公園に到着。この景色は言葉にならない。
1910年に設定されたグレーシャー国立公園。40万ヘクタール以上の広さの中に、野生の動物や野生の花々が生息しています。現在も活動を続ける氷河が削り作った深い渓谷・美しい湖・大草原などの広大な大自然には、ヘラジカ・ハイイログマ・ハゲタカなど数多くの野生動物が生息しています。また公園内には、19世紀の雰囲気を持つ8つの宿泊施設があります。年間およそ300万人以上の観光客が公園を訪れ、6・7・8月が1番混み合うので、野生動物を見るチャンスも増えるシーズンオフに訪れる人も増えてきています。
モンタナ州政府駐日代表事務所
ここより北にはCDTの標は無く、この国境の石碑がスタート地点らしい。今までに、何度も何度もネットで見てきたこの石碑を目の前に、よくぞここまで来たもんだと感無量。涙がちょちょぎれそうだけど、まだ始まってもいないぞ俺。
遂にスタート。実物の指標を目の前に。これからよろしく!
ぼちぼち歩いていると、少しずつ心と身体がほぐれていく。久しぶりのこの感覚。4年前を思い出してきた。
テント指定地で出会ったファミリーハイカーズ。心地が良いハイキングが続いても、大自然はいつ何が起こるかわからない。その緊張感ををほぐしてくれるのは人の優しさなのかもしれない。美味しい珈琲をありがとう。
峠を越える。
振り返ると絶景。いくつもの峠を越えてきたけど、振り返った時の風景にはどこか寂しさが残る。
そして、新しく出会う世界がその寂しさを打ち消してくれる。
日没に焦っていても、立ち止まってしまうこの瞬間。聞こえるのは風の音と僕の鼓動だけ。
翌日は朝から大雨。メニーグレーシャーキャンプサイトで仲良くなったご夫婦にセントメリーのホテルまで送ってもらう。そこで出会ったのが、フランス人CDTハイカーのフレデリック。同じ歳ということを知って、急にフレンドリーになる僕。
今回はここまでっす。
| アメリカ時間 6/13 | ロスアンゼルス、ポートランド |
| 6/14 | アムトラックで移動 |
| 6/15-16 | パーミット取れず、キャンプサイトで停滞 |
| 6/17 | ヒッチハイクでスタート地点へ |
| 6/17-19 | ハイキング! |
| 6/20 | ゼロデイ |
